プロデューサー:登米裕一×演出:須貝英 対談 ③

日本の演劇がもっと面白くなったら。

須貝
演出家って質問力問われますよね。僕、演出家の能力ってそれだけだと思うんです。的確な質問ができるか。

登米
そうね。

須貝
この役に関してどう思う?とか、この時ってどうなの?とかいったことを聞いてあげる。そういう質問力。演技指導ができる人や独特なイメージを持ってる人はたくさんいて、それは演出家としては当然の能力なんですけど、役者から何をどうやって引き出すかをどこまで先を見て質問できるかってことが、いい演出家かかどうかだと思っていて。

登米
ふむ。

須貝
何かを与えてそれをやってもらうのは簡単だけど、結局何か、自分の中で作り出したり、引っ張り上げてもらったものの方が魅力的なことが多いじゃないですか。だから質問する能力、インタビュー力が演出家にはすごく大事だなって思っています。

登米
いい演出家がいればいい役者が育つし、いい演劇が出来る。もっと若手演出家が育つ環境になればいいんだけどね。

須貝
その通りだと思います。日本は演出家が少ないと思います。

登米
マイズナーとかスタニスラフスキーとか海外の演技演出論をきちんと勉強する人も増えたけど精神論だけで乗り込む演出家さんも未だに見る。海外だと演出家ならあなたが書いた論文見せてって言われるとこもある。

須貝
そうですね、研究職みたいな扱いですよね。

登米
稽古少し見せてもらったけど須貝英っていう演出家は役者のコントロールが上手だなと感じた。

須貝
僕も役者でやっていて演出家に対して「なんだお前」って思うことは今でもあるし(笑)。役者の時は結構オラオラな気持ちでやっていることが多いんですけど、でもそれでやっぱりあんまり上手くいかなかったり、逆に自分が損したりって経験をたくさんして。

登米
ふむ。

須貝
だから今は、同じ現場にいる内はその人のことを絶対に否定しないっていうルールを守るようにしているんです。この人には何かがあるかもしれない、あるに違いないっていう。その人に対する尊敬の気持ちを持っていれば、悪い所って基本的にはないから。

登米
ふむ。

須貝
それから、今有名な演出家たちには大抵スタイルがあって、「あの人はああいうスタイル」みたいなイメージが観客側にはあるけど、僕は本当に優れた演出家にはスタイルは必要ないと思っていて。

登米
なるほど。

須貝
だから彼らの本当に優れた所も、スタイルとは別の所にあると思うんですよ。脚本と集まった役者によって、できる作品って絶対に違ったものになるはずだから、それを最大限に汲み取れる人が演出家だと思っていて。

登米
ふむ。

須貝
なので自分で演出してる時は、僕のにおいがすると思った瞬間にその演出をやめます。それは僕の自己満足でしかないから。ってなことを思っていると自然とあんまり戦わなくなります。色んなことに対して「そうなんだ~」って思うことが増えて、段々楽になってます。

登米
そういうスタンスの演出家って少ないから、これからますます求められるかもしれないね。30年後もしかしたら天下取ってるかも。

須貝
取ってるといいですけどね。

登米
そのときには登米も天下を取ります何かで(笑)

須貝
(笑)でも、天下取ってなくてもいいんですよ、ただ、30年後の日本がめちゃくちゃ面白い芝居で溢れてなきゃいけないと思うんです。そうじゃないと僕の30年は無駄だったって思うと思います。どれ観ても全部面白い、日本全部ブロードウェイみたいな、どの芝居もハズレなしかよ!っていう状況に30年後できていなかったら、僕の負けです。僕が食っていなくても全然いいから。

登米
すごい背負ってるね。

須貝
僕たちの世代が「いやあそんなの別にいいでしょ!自分さえ売れれば」みたいなことを言って今から背負うのを逃げてたら、ダメになっちゃうんですよ。ダメになって一番損をするのが僕たちなんで。僕は公言しますけど、日本の演劇界を背負ってます。

登米
難しい世代だよね。真に恐れるべきは有能な敵ではなく無能な味方だと言われるように演劇を否定する人よりも、お金になるんだからこれも演劇だよねと言う演劇愛のない人も近付いてくる事も増えるだろうし、その方が怖い。

須貝
そうなるでしょうね。でも別にそれを自分色に染めようとはあんまり思わないですけどね。

登米
休日を過ごす時の選択肢として演劇以外の新しいコンテンツはどんどん増えている。もうそことの勝負ではない気もしているけれど、新しいエンタメと演劇とのコラボをいち早く考えているプロデューサーもいて、演劇と言うジャンルがこの先日本だけでガラパゴス的な進化をするんだろうなと思うんだよね。

須貝
パート1のマルチタスクの話じゃないけど、それはそれだと思っていて。仕方ないとも感じます。僕が問題だと思うのは、多くの作り手が可能性を限定されていること。例えば新感覚な演劇を演出した人が岸田國士をオーソドックスにやっても別にいいじゃんって思うんです。

登米
ふむ。

須貝
同じ人に同じ仕事しか持ってこないことのつまらなさというか。自分が今回のようなプロデュース公演に参加する時や、自分のユニットに役者を客演で呼ぶ時は、それぞれの劇団でやってることや普段やってることは絶対にやらせないぞっていう気概を持ってやってる。

登米
ふむ。

須貝
同じイメージしか与えられないのは使う側の至らなさだなと思っていて。役者も演出家も脚本家ももっと色んなことできるしやるべきなんですよ。だからこそ、プロデューサー業って大事だなって思ってるんです。

登米
いい演出家がいい役者を育てる、そしていい演出家を育てるのはいいプロデューサーだからね。と言うと自分に返ってきてしまうけれど(笑)でも今回は本当に素敵な人たちが集まったので5年後、10年後にも「そでふりあうも」を見ておいて良かったと思ってもらえるような舞台になると信じています。よろしくお願いします。

ブラシュカpresents 2017年7月公演
『そでふりあうも』

【日時】
2017年7月12日(水)~7月17日(月祝)
【場所】
新宿シアター・ブラッツ

【CAST】(五十音順)
阿久澤菜々、岩井七世、岡田地平、小沢道成(虚構の劇団)、加藤良輔、川島佳帆里、篠原彩、橘花梨、
富田庸平(キリンバズウカ)、武藤賢人、安川純平、ヨシケン改(動物電気)

【チケット】
イープラス:http://eplus.jp(PC・携帯) にて「ブラシュカ」で検索

【詳細はこちらへ】
http://ameblo.jp/burashka/entry-12278711742.html